子供の胃腸炎で病院?行くべき判断基準と自宅ケアのポイント

子供が突然、嘔吐や下痢を繰り返すと、保護者の方は「もしかして胃腸炎?」「病院に連れて行くべき?」と不安になりますよね。特に小さなお子さんの場合、症状をうまく伝えられなかったり、あっという間にぐったりしてしまうこともあります。この記事では、子供の胃腸炎で病院に行くべきかどうかの判断基準や、自宅でできるケアの方法について、詳しく解説します。いざというときに慌てないためにも、ぜひ参考にしてください。

子供の胃腸炎、まずは症状を確認

子供の胃腸炎は、ウイルスや細菌などが原因で胃腸の粘膜に炎症が起きる病気です。原因によって症状の出方や重症度が異なりますが、まずは落ち着いて子供の症状をよく観察することが大切です。

胃腸炎の主な症状(嘔吐・下痢・発熱など)

子供の胃腸炎でよく見られる主な症状は以下の通りです。

  • 嘔吐: 食事や水分を摂るとすぐに吐いてしまう、何度も吐き気がある。初期症状として現れやすいです。
  • 下痢: 水っぽい便が頻繁に出る。
  • 腹痛: お腹が痛いと訴える、機嫌が悪くお腹を気にしている様子がある。
  • 発熱: 熱が出ることもありますが、ない場合もあります。
  • 吐き気: 胃のむかつきや気持ち悪さを訴える。
  • 全身倦怠感: 元気がなく、ぐったりしている。
  • 食欲不振: いつもより食欲がない、何も食べようとしない。

これらの症状は一つだけ出る場合もあれば、複数組み合わさって現れる場合もあります。特に嘔吐は初期に強く出て、数時間から1日程度で落ち着き、その後下痢が続くという経過をたどることが多いです。

嘔吐のみの場合の対応

嘔吐は胃腸炎の初期症状としてよく見られますが、胃腸炎以外にも様々な原因で起こる可能性があります。嘔吐のみで他の症状(下痢、発熱、腹痛など)がほとんどなく、比較的元気がある場合は、少し様子を見ても良いかもしれません。

ただし、嘔吐が頻繁で水分を全く受け付けない場合や、嘔吐物に血が混ざっている場合激しい腹痛を伴う場合は、胃腸炎以外の重篤な病気の可能性も考えられるため、すぐに医療機関を受診してください。

嘔吐がある間は、無理に飲食させず、胃を休ませることが大切です。嘔吐が落ち着いたら、少量ずつ水分(経口補水液など)を与えてみましょう。

下痢のみの場合の対応

下痢も胃腸炎の代表的な症状ですが、他の原因(食べ過ぎ、冷え、薬の副作用など)でも起こります。下痢のみで、嘔吐や発熱がなく、子供が比較的元気で水分も摂れている場合は、自宅で様子を見ながらケアすることも可能です。

下痢の場合、体から水分や電解質が失われやすいので、脱水に注意が必要です。こまめに水分補給を行い、消化の良い食事を心がけましょう。

ただし、下痢の回数が非常に多い場合血便が出た場合下痢が長く続く場合お腹の痛みが強い場合脱水症状のサインが見られる場合は、早めに医療機関を受診してください。

嘔吐、下痢、熱なしの場合

胃腸炎は必ずしも全ての症状が出るわけではありません。嘔吐や下痢があっても熱が出ないこともよくあります。

  • 嘔吐と下痢はあるが熱はない: ウイルス性胃腸炎ではよく見られる経過です。脱水に注意しながら自宅でケアし、危険なサインがないか注意深く観察してください。
  • 嘔吐も下痢もなく、熱だけ: 胃腸炎以外の感染症(風邪、インフルエンザ、尿路感染症など)の可能性が高いです。熱の高さや他の症状(咳、鼻水、咽頭痛など)に合わせて受診を検討しましょう。
  • 嘔吐、下痢、熱のいずれも顕著ではないが、お腹が痛い、食欲がない、元気がないなど: 軽症の胃腸炎かもしれませんし、他の原因も考えられます。症状が続く場合や悪化する場合は受診してください。

熱がないからといって軽く見すぎず、子供の全体的な様子(元気があるか、水分が摂れているかなど)をよく観察することが重要です。

胃腸炎で子供が寝てばかりいるのは大丈夫?

胃腸炎にかかると、体力を消耗するため、子供がいつもより寝てばかりいる、ぐったりしているという状態になることがあります。これは病気と戦っている体の正常な反応であることも多いです。

しかし、単に眠いのではなく、呼びかけに反応しないほどぐったりしている目線が合わない意識が朦朧としているといった場合は、重症化のサインである可能性があります。特に脱水が進行すると、活気がなくなり、ぐったりすることがあります。

子供が寝てばかりいる場合は、眠っているのか、それとも意識レベルが低下しているのかを注意深く観察してください。起こしてみて反応があるか、水分を飲ませようとするとどうなるかなどを確認しましょう。いつもと違う「ぐったり」した様子が見られたら、すぐに医療機関を受診しましょう。

子供の胃腸炎で病院に行くべきか判断する基準

子供の胃腸炎では、適切なタイミングで病院を受診することが非常に大切です。軽症であれば自宅で様子を見ても良いことが多いですが、中には重症化し、迅速な処置が必要となるケースもあります。ここでは、病院に行くべきかどうかの具体的な判断基準を解説します。

今すぐ受診が必要な危険なサイン

以下の症状が一つでも見られた場合は、迷わずにすぐに医療機関を受診してください。これらのサインは、脱水が進んでいたり、胃腸炎以外の重篤な病気が隠れていたりする可能性があります。

激しい嘔吐や下痢が頻繁に続く

  • 頻回の嘔吐: 1日に何度も吐き続け、水分を全く受け付けない。
  • 頻回の水様性下痢: 非常に水っぽい便が短時間に何度も出る。
    • なぜ危険? 体から大量の水分と電解質が急速に失われ、脱水症状を引き起こすリスクが非常に高いからです。

水分がまったく摂れない、脱水症状の兆候がある

  • 水分を欲しがらない、または飲ませても吐いてしまう。
  • おしっこの回数が著しく少ない、または半日以上出ていない。
  • 唇や口の中が乾いている。
  • 泣いたときに涙が出ない。
  • 皮膚の張りがない(お腹などの皮膚をつまんで、すぐに戻らない)。
  • 目がくぼんでいる。
  • ぐったりしていて、活気がない。
  • 顔色が悪い。
    • なぜ危険? 子供は大人よりも体の水分量が多いため、脱水になりやすく、進行も早いです。重度の脱水は命に関わることもあります。

元気がなく、ぐったりしている

  • あやしても笑わない、反応が鈍い。
  • 意識がはっきりしない、朦朧としている。
  • 呼びかけへの反応が非常に遅い、またはない。
    • なぜ危険? 脱水の進行や他の重篤な病気を示唆している可能性があります。意識状態の変化は特に注意が必要です。

血便やひどい腹痛がある

  • 便に目に見える血が混ざっている。
  • 持続する激しい腹痛を訴えたり、お腹を抱えてうずくまるなど、痛みが強い様子。
    • なぜ危険? 腸閉塞、虫垂炎、腸重積症など、手術が必要になる可能性のある病気や、特定の細菌感染症(腸管出血性大腸菌など)の可能性があり、迅速な診断と治療が必要です。

高熱が下がらない

  • 38.5℃以上の高熱が続き、解熱剤を使っても下がりにくい。
  • 高熱と他の危険なサイン(ぐったり、水分が摂れないなど)を伴う。
    • なぜ危険? 高熱自体も体力を消耗させますが、他の重篤な感染症の可能性も考えられます。

これらのサインが見られたら、夜間や休日であっても救急病院を受診するなど、すぐに医療機関の診察を受けることが重要です。

様子を見ても良いケース

以下の場合は、自宅で注意深く様子を見ながらケアを行うことが可能です。

  • 嘔吐はあっても、数時間で落ち着き、その後は水分を少量ずつなら摂れている。
  • 下痢はあるが、回数はそれほど多くなく、元気がある。
  • 熱はない、または微熱程度で、他の症状も軽い。
  • 水分や食事を少量ずつだが受け付け、比較的活気がある。
  • 脱水症状のサインが見られない(おしっこが出ている、唇が乾いていないなど)。

ただし、自宅で様子を見る場合でも、症状が悪化したり、新たに危険なサインが現れたりしないか、注意深く観察を続けることが非常に重要です。少しでも不安を感じたら、迷わずに医療機関に相談しましょう。

子供が胃腸炎になったら受診したほうがいいですか?(PAA)

子供が胃腸炎になったら、必ずしもすべてのケースで受診が必要というわけではありません。症状が軽く、水分がしっかり摂れていて、元気もある場合は、自宅で適切なケアをすることで回復することがほとんどです。

しかし、前述した「今すぐ受診が必要な危険なサイン」が見られる場合や、症状が軽くても保護者が「いつもと違う」「何かおかしい」と感じる場合は、迷わずに医療機関を受診してください。特に小さなお子さんや、持病があるお子さんの場合は、早めに相談することをおすすめします。

地域の救急相談窓口(#8000など)に電話で相談してみるのも良い方法です。看護師や医師からアドバイスを受けることができます。

受診するかどうかの判断に迷ったら、地域の救急相談窓口(#8000など)に電話で相談してみるのも良い方法です。看護師や医師からアドバイスを受けることができます。

子供 嘔吐 下痢 受診のタイミング

子供が嘔吐や下痢をしている場合の受診タイミングは、症状の重さや経過によって異なります。

症状の経過・状態 受診タイミング
【すぐに受診】 すぐに医療機関(かかりつけ医または救急病院)へ
激しい嘔吐や下痢が頻繁で、水分が全く摂れない
脱水症状のサイン(ぐったり、尿量減少など)が見られる
ぐったりしていて、呼びかけへの反応が鈍い
血便が出る
ひどい腹痛を訴える
高熱と他の危険なサインがある
【早めに受診(翌日など)】 診療時間内に医療機関(かかりつけ医など)へ
嘔吐は落ち着いたが、下痢が続いている
水分は少量摂れるが、食欲がなく元気がない
症状が続くが、危険なサインはない
【様子を見ても良い】 自宅でケアしながら注意深く観察
嘔吐や下痢があるが、回数が少なく軽症
水分がしっかり摂れていて、比較的元気がある
熱はなく、他の症状も軽い

この表はあくまで一般的な目安です。お子さんの状態は刻々と変化することがありますので、常に注意深く観察し、不安を感じたらすぐに専門家に相談することが最も重要です。

子供 下痢 受診のタイミング

子供が下痢をしている場合の受診タイミングは、下痢以外の症状の有無や、子供の全体的な状態によって判断します。

  • 【すぐに受診】:
    • 下痢の回数が非常に多く、水っぽい便が止まらない
    • 血便が出る
    • ひどい腹痛を伴う
    • 脱水症状のサインが見られる(尿量減少、ぐったりなど)
    • 高熱を伴う
  • 【早めに受診(翌日など)】:
    • 下痢が数日続いて改善しない
    • 下痢以外の症状(発熱、腹痛など)がある
    • 食欲がない、元気がない
  • 【様子を見ても良い】:
    • 下痢はあるが回数が少なく、形のある便も混ざる
    • 水分がしっかり摂れていて、元気がある
    • 他の症状がない、または軽い

下痢だけでも脱水につながることがあるため、特に小さなお子さんの場合は注意が必要です。普段の便の状態を知っておくことも、異常に気づくために役立ちます。

自宅でできる胃腸炎の子供への正しいケア

子供が胃腸炎と診断された場合や、自宅で様子を見ることにした場合、適切なケアを行うことが回復を早め、重症化を防ぐために非常に重要です。特に脱水予防と栄養補給は大切なポイントです。

脱水症状の予防と水分補給(経口補水液など)

胃腸炎、特に嘔吐や下痢がある場合は、体から水分や電解質(ナトリウム、カリウムなど)が失われやすいため、脱水症状を起こさないように十分注意する必要があります。

  • 水分補給の重要性: 失われた水分と電解質を補うことが脱水予防の基本です。
  • 何を飲ませるか:
    • 最も推奨されるのは「経口補水液」です。 経口補水液は、水分と電解質がバランス良く含まれており、吸収されやすいように糖分も少量含まれています。市販のものがドラッグストアや薬局で手に入ります(例: OS-1など)。
    • スポーツドリンク: スポーツドリンクは経口補水液に比べて糖分が多く、電解質が少ないため、大量に飲むと下痢を悪化させたり、電解質のバランスを崩したりすることがあります。緊急時や経口補水液が手に入らない場合に、薄めて少量与える程度なら良いですが、基本的には経口補水液を優先しましょう。
    • 麦茶、薄めたリンゴジュース: 吐き気が落ち着いてきたら、麦茶や白湯、子供用のイオン飲料、薄めたリンゴジュースなども水分補給に使えます。ただし、ジュース類は糖分が多いので、与えすぎに注意し、必ず薄めて少量ずつ与えましょう。
    • 与えてはいけないもの: 牛乳、炭酸飲料、柑橘系のジュースなど、胃腸に刺激を与えたり、下痢を悪化させたりする可能性のあるものは避けましょう。
  • どうやって飲ませるか:
    • 少量ずつ、こまめに与えるのがポイントです。 一度にたくさん飲ませると、再び吐いてしまうことがあります。スプーン1杯から始め、吐かなければ5分おきにスプーン2杯、10分おきに一口など、徐々に量を増やしていきます。
    • 嘔吐がひどい時は、無理に飲ませず、30分〜1時間ほど胃を休ませてから再開しましょう。
    • 子供が欲しがったら、欲しがるだけ与えて構いません。

脱水症状のサイン(前述の「危険なサイン」参照)が見られないか、定期的にチェックしましょう。

胃腸炎時の食事の与え方

胃腸炎時の食事の与え方については、専門機関である東邦大学医療センター佐倉病院 小児科の資料でも具体的な目安が示されています。

幼児の下痢と嘔吐の食事療法では、まず水分と“非常に消化の良いもの”から始め、1回量はいつもの半分以下とし、間隔をあけて与えます。足りない分は食事の回数を増やして補います。嘔吐がなくなったら、“消化の良いもの”を与え始め、量も徐々に増やし、2〜3日かけて元の食事内容に戻していくことが推奨されています。(参照: 東邦大学医療センター佐倉病院 小児科「幼児の下痢と嘔吐の食事療法」https://www.lab.toho-u.ac.jp/med/sakura/ped/links/nf03l300000001eo-att/tjoimi0000000asq.pdf

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です