尿検査に引っかかる理由とは?病気?一時的?項目別に解説

健康診断や人間ドックの結果を見て、「尿検査で引っかかった」という経験をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。「病気かもしれない…」と不安に感じる方もいれば、「特に自覚症状はないけれど大丈夫?」と疑問に思う方もいるでしょう。

尿検査は、私たちの体の状態を知るための重要な手がかりの一つです。特に腎臓や尿路、代謝の状態を反映するため、異常が見つかることで早期に病気の手がかりを得られることがあります。しかし、尿検査で異常値が出たからといって、必ずしも重篤な病気とは限りません。体調や食事、一時的な要因によって異常値が出ることが多々あります。

この記事では、尿検査で主に調べられる項目と、それぞれの項目で異常が見られる「引っかかる理由」について、病気が原因の場合とそうでない場合を分けて詳しく解説します。尿検査の結果に不安を感じている方が、自身の状態を正しく理解し、適切な対応をとるための一助となれば幸いです。(この記事は医師の監修を受けています。)

尿検査で主に調べられる項目

健康診断などで行われる一般的な尿検査では、主に以下の項目が調べられます。それぞれの項目は、体内の様々な機能や状態を示唆しています。これらの項目や基準値に関する詳細は、日本腎臓病学会のガイドラインなども参照できます(例: 第2章 検尿の原則)。

項目 調べる内容 異常値が示す可能性
尿蛋白 尿中に含まれるタンパク質の量 腎臓病、尿路感染症、全身の病気、生理的要因など
尿糖 尿中に含まれるブドウ糖(グルコース)の量 糖尿病、腎性尿糖、一時的な高血糖など
尿潜血 尿中に赤血球が混じっているか(出血の有無) 尿路結石、膀胱炎、腎臓病、尿路の癌、生理的要因など
尿白血球 尿中に含まれる白血球の量 尿路感染症(膀胱炎、腎盂腎炎など)、炎症など
尿ウロビリノーゲン 胆汁色素の代謝産物 肝臓病、溶血性貧血など
pH 尿の酸性度・アルカリ性度 尿路感染症、代謝性疾患、食事、薬剤など
比重 尿の濃さ 脱水、水分過多、腎機能障害など
ケトン体 脂肪代謝によって生成される物質 糖尿病、飢餓状態、激しい運動など
ビリルビン 胆汁色素 肝臓病、胆道疾患など
亜硝酸塩 尿中の細菌が硝酸塩を還元して生成 尿路感染症(特定の細菌感染)

これらの項目は、それぞれが単独で異常を示すこともあれば、複数の項目が同時に異常値を示すこともあります。異常値が出た場合、次に解説するような様々な原因が考えられます。

項目別|尿検査で「引っかかる」原因とは

それでは、尿検査で「引っかかる」、つまり異常値が検出される主な理由を項目別に詳しく見ていきましょう。病気が原因の場合と、一時的な生理的な要因による場合があることを理解することが重要です。

尿蛋白で引っかかる理由

尿蛋白は、尿中にタンパク質が多く含まれている状態です。通常、健康な腎臓では血液中のタンパク質はろ過されず、尿中にはほとんど漏れ出しません。しかし、何らかの原因で腎臓の機能が低下したり、腎臓以外の場所に問題があったりすると、尿中にタンパク質が検出されるようになります。

病気が原因となる尿蛋白

尿蛋白が持続的に検出される場合、腎臓病や全身の病気が原因である可能性が高まります。主な原因としては以下のものが挙げられます。

  • 腎臓病:
    • 糸球体腎炎: 腎臓のフィルター機能を持つ糸球体に炎症が起きる病気です。様々なタイプがあり、急性・慢性、原因も多岐にわたります。タンパク質がろ過膜を通り抜けて尿中に出てしまうため、尿蛋白の主要な原因の一つです。
    • 糖尿病性腎症: 糖尿病が長期間続くことで、腎臓の血管が障害され、腎機能が低下する合併症です。初期には微量のアルブミン(タンパク質の一種)が尿中に出る「微量アルブミン尿」として始まり、進行すると顕著な尿蛋白が検出されるようになります。
    • 高血圧性腎硬化症: 高血圧が長期間続くことで、腎臓の血管が硬くなり、腎臓の機能が低下する病気です。腎臓への血流が悪化し、タンパク質が尿中に出やすくなります。
    • 腎盂腎炎: 細菌感染によって腎臓の腎盂や腎臓自体に炎症が起きる病気です。尿蛋白だけでなく、発熱や背中の痛み、頻尿などの症状を伴うことが多いです。
    • その他: 薬剤性腎障害、遺伝性腎疾患など、様々な腎臓病が尿蛋白の原因となります。
  • 全身の病気:
    • 多発性骨髄腫: 血液の癌の一種で、異常なタンパク質(M蛋白)が体内で作られ、それが腎臓でろ過されて尿中に出てくることがあります。
    • アミロイドーシス: 異常なタンパク質が全身の臓器に沈着する病気で、腎臓に沈着すると機能障害を起こし、尿蛋白の原因となります。
    • 膠原病: 関節リウマチや全身性エリテマトーデス(SLE)など、自己免疫疾患の一部が腎臓を障害し、尿蛋白を引き起こすことがあります(ループス腎炎など)。
  • 心不全: 心臓のポンプ機能が低下すると、腎臓への血流が滞り、尿蛋白が出やすくなることがあります。

持続的な尿蛋白は、腎機能の低下や全身の重要な病気のサインである可能性があるため、放置せず医療機関で詳しく調べることが非常に重要です。特に、高血圧や糖尿病など既往症がある方は注意が必要です。

病気以外の原因・一時的な尿蛋白(起立性蛋白尿、運動、発熱、妊娠、射精、女性特有の理由など)

尿蛋白が検出されても、必ずしも病気とは限りません。一時的な生理的な要因によって、尿中にタンパク質が多く含まれることがあります。これらの場合、多くは再検査で異常が消失します。

  • 起立性蛋白尿: 若い方(特に思春期)によく見られるもので、横になっているときには尿蛋白が出ず、起き上がって活動しているときに尿蛋白が出現する現象です。腎臓自体に病気があるわけではなく、腎臓への血流の変化など生理的な原因と考えられています。成長期を過ぎると自然に消失することが多いですが、診断には詳しい検査(例えば、夜間尿と昼間尿の比較)が必要です。
  • 激しい運動後: 激しい運動や肉体労働の後、一時的に尿蛋白が出ることがあります。筋肉の破壊に伴って出るタンパク質や、腎臓への血流の変化などが関係していると考えられています。安静にしていれば数時間~1日程度で消失します。
  • 発熱: 風邪などで高熱が出ているときにも、一時的に尿蛋白が出ることがあります。体への負担や炎症反応などが関係していると考えられます。熱が下がれば消失します。
  • 脱水: 水分摂取が不十分で脱水気味の場合、尿が濃縮されて一時的に尿蛋白が陽性になることがあります。
  • ストレス: 精神的なストレスや疲労が大きい場合にも、一時的に尿蛋白が出ることがあると言われています。
  • 妊娠: 妊娠中は体の変化に伴い、尿蛋白が出やすくなることがあります。特に妊娠後期に尿蛋白と高血圧が見られる場合は、妊娠高血圧症候群の可能性があり、注意が必要です。
  • 射精(男性): 尿道に精液が残っていると、その中に含まれるタンパク質が尿検査で検出されることがあります。尿検査の直前の射精は避けることが推奨されます。
  • 女性特有の理由: 月経期間中やその前後に尿検査をすると、血液や分泌物が混入して尿蛋白が陽性になることがあります。また、帯下(おりもの)の混入でも陽性になることがあります。生理期間を避けて検査を受けるのが一般的です。

これらの原因による一時的な尿蛋白は、特別な治療を必要としないことが多いです。しかし、自己判断はせずに、まずは再検査を受けて持続的な尿蛋白かどうかを確認することが大切です。

尿糖で引っかかる理由

尿糖は、尿中にブドウ糖(グルコース)が含まれている状態です。通常、血液中のブドウ糖は腎臓でろ過されますが、必要な分はすべて尿細管で再吸収されるため、健康な人の尿中にはほとんどブドウ糖は出てきません。しかし、血液中のブドウ糖濃度(血糖値)が非常に高くなると、腎臓で再吸収しきれなくなり、尿中にブドウ糖が漏れ出します。また、血糖値が高くなくても、腎臓の機能の問題で尿糖が出ることもあります。

病気が原因となる尿糖(糖尿病など)

尿糖が持続的に検出される最も代表的な原因は、糖尿病です。

  • 糖尿病: 糖尿病は、インスリンというホルモンの作用が不足したり、働きが悪くなったりすることで、慢性的に血糖値が高くなる病気です。血糖値が一定の基準(腎臓の閾値、通常は160~180mg/dL程度)を超えると、尿中にブドウ糖が漏れ出し、尿糖が陽性となります。尿糖が陽性であることは、現在、血糖値が高い状態であることを強く示唆します。糖尿病は、放っておくと全身の様々な臓器に合併症を引き起こすため、尿糖が陽性だった場合は必ず医療機関で詳しく検査する必要があります。
  • 腎性尿糖: 血糖値が正常範囲内であるにもかかわらず、尿糖が陽性となる状態です。これは、腎臓の尿細管でブドウ糖を再吸収する機能が遺伝的に低い、あるいは何らかの腎疾患によって低下しているために起こります。腎性尿糖自体は病気ではないことが多いですが、稀に他の腎疾患に伴って生じることもあるため、診断には専門医の判断が必要です。一般的には、血糖値が正常であれば、健康上の大きな問題にはならないことが多いです。

一時的な尿糖(食後、薬剤など)

病気以外の原因で、一時的に尿糖が検出されることもあります。

  • 食後: 特に糖分の多い食事を摂取した直後は、一時的に血糖値が急上昇し、腎臓の閾値を超えて尿糖が出る場合があります。これは生理的な現象であり、多くの場合、時間とともに血糖値が正常に戻れば尿糖も消失します。ただし、食後の高血糖が頻繁に起こる場合は、糖尿病予備群や隠れ糖尿病の可能性も考えられます。
  • 薬剤性: ステロイド薬など、一部の薬剤は血糖値を上昇させ、尿糖を出現させることがあります。
  • ストレス: 強いストレスや興奮によって、一時的に血糖値が上昇し、尿糖が出ることがあると言われています。

尿糖が陽性だった場合、まず大切なのは血糖値を確認することです。早朝空腹時の血糖値、HbA1c(過去1~2ヶ月の血糖コントロールの指標)などの検査を行い、糖尿病の有無を診断します。尿糖陽性でも血糖値が正常であれば、腎性尿糖などの可能性を検討します。

尿潜血で引っかかる理由

尿潜血は、尿中に赤血球が混じっている状態です。肉眼で尿の色が赤っぽく見える場合は「肉眼的血尿」、見た目は正常だが顕微鏡検査や試験紙で赤血球が検出される場合は「尿潜血」や「顕微鏡的血尿」と呼ばれます。尿潜血は、尿を作る過程から尿が体外に排出されるまでの「尿路」(腎臓、尿管、膀胱、尿道)のどこかに異常がある可能性を示唆します。

病気が原因となる尿潜血(尿路結石、膀胱炎、腎臓病、癌など)

持続的な尿潜血は、尿路の病気が原因であることが多いです。中には重篤な病気のサインであることもあるため、見過ごせません。

  • 尿路結石: 腎臓や尿管、膀胱などに石ができる病気です。結石が尿路を移動する際に粘膜を傷つけ、出血を引き起こすことがあります。特に尿管結石では、激しい脇腹や背中の痛みを伴うことが多いですが、痛みがないのに尿潜血が見られることもあります。
  • 膀胱炎・腎盂腎炎: 細菌感染によって膀胱や腎盂に炎症が起きる病気です。炎症した粘膜から出血し、尿潜血の原因となります。膀胱炎では頻尿、排尿痛、残尿感などを伴うことが多く、腎盂腎炎ではこれらに加えて高熱や背中の痛みを伴うことが多いです。
  • 腎臓病: 糸球体腎炎など、腎臓自体の病気でも尿潜血が見られることがあります。腎臓のフィルター機能が障害され、赤血球が尿中に漏れ出すためです。腎臓病による血尿は、痛みを伴わないことが多く、尿蛋白も同時に認められることが多いです。
  • 尿路の癌: 腎臓癌、尿管癌、膀胱癌、前立腺癌(男性)など、尿路のどこかにできた悪性腫瘍(癌)が出血を起こし、尿潜血や肉眼的血尿の原因となることがあります。特に高齢の方で、痛みのない血尿が見られる場合は、癌の可能性も考慮して詳しく調べる必要があります。
  • 前立腺肥大症(男性): 前立腺が肥大し、尿道を圧迫する病気です。肥大した前立腺の血管がうっ血したり、傷ついたりして出血することがあります。排尿困難などの症状を伴うことが多いです。
  • その他: 尿路の外傷(打撲など)、薬剤性(一部の抗凝固薬など)、稀な血管の病気など。

痛みのない血尿は、一見軽視されがちですが、悪性腫瘍のサインである可能性も否定できないため、必ず医療機関で原因を特定することが重要です。

病気以外の原因・一時的な尿潜血(生理、激しい運動後など)

尿潜血も、一時的な生理的要因で陽性となることがあります。

  • 生理中: 女性の場合、月経期間中やその直前・直後に尿検査をすると、尿に経血が混入して尿潜血が陽性となることが非常に多いです。生理期間中の尿検査は避けるのが一般的です。
  • 激しい運動後: マラソンなど、激しい運動の後には、腎臓への血流変化や膀胱の粘膜への機械的な刺激などにより、一時的に尿潜血が出ることがあります。「行軍血尿」と呼ばれることもあります。安静にしていれば消失します。
  • 打撲: 尿路周辺、特に腎臓のある背中や腰を強く打った場合、一時的に血尿が出ることがあります。
  • 水分摂取不足: 尿が濃縮されていると、尿中の成分が刺激となり、一時的に軽度の尿潜血が出ることがあると言われています。

一時的な尿潜血の場合も、まずは再検査で確認することが基本です。しかし、肉眼で見て明らかな血尿が出た場合や、尿潜血が持続する場合、あるいは排尿痛や発熱などの他の症状を伴う場合は、速やかに医療機関を受診すべきです。

尿白血球で引っかかる理由

尿白血球は、尿中に白血球が多く含まれている状態です。白血球は体の免疫細胞であり、炎症や感染が起きている場所に集まる性質があります。尿中に白血球が検出される場合、尿路のどこかで炎症、特には細菌感染による炎症が起きている可能性を示唆します。

病気が原因となる尿白血球(尿路感染症など)

尿白血球の最も一般的な原因は、尿路感染症です。

  • 尿路感染症:
    • 膀胱炎: 細菌が尿道から侵入し、膀胱内で増殖して炎症を起こす病気です。女性に非常に多く見られます。頻尿、排尿痛、残尿感、下腹部痛などの症状を伴うことが多く、尿検査では尿白血球とともに細菌や尿潜血が検出されることもあります。
    • 腎盂腎炎: 細菌感染が腎臓の腎盂にまで及んだ状態です。膀胱炎の症状に加えて、高熱、悪寒、背中や脇腹の痛みなどを伴うことが多いです。重症化することもあるため、早期の治療が必要です。
    • 尿道炎: 尿道に炎症が起きる病気です。排尿時の痛みや痒み、分泌物などを伴うことがあります。性感染症が原因となることもあります。
    • 前立腺炎(男性): 前立腺に炎症が起きる病気です。排尿困難、頻尿、排尿痛、会陰部の痛みなどを伴うことがあります。
  • 尿路の炎症: 結石による刺激や、異物の留置(カテーテルなど)による刺激など、感染を伴わない炎症でも尿白血球が増えることがあります。

一時的な尿白血球

尿白血球も、一時的に陽性となることがあります。

  • コンタミネーション: 検体採取の際に、尿道口の周囲に付着した分泌物や炎症細胞が混入することがあります。特に女性の場合、帯下(おりもの)などが混入することで偽陽性となることがあります。清潔な方法で中間尿を採取することが重要です。
  • 発熱や全身の炎症: 尿路以外での全身の炎症や感染、高熱などがある場合、一時的に尿中の白血球が増加することがあります。

尿白血球が陽性で、特に自覚症状がある場合は、尿路感染症の可能性が高いため、医療機関を受診して適切な抗生剤治療を受けることが重要です。症状がなくても、持続的に尿白血球が検出される場合は、他の炎症や感染源がないか確認が必要です。

その他の項目で引っかかる理由(尿ウロビリノーゲン、pH、比重など)

一般的な尿検査では、上記以外にもいくつかの項目が測定されます。これらの項目も、体の状態に関する情報を提供してくれます。

  • 尿ウロビリノーゲン: 血液中のビリルビンという物質が腸内細菌によって分解され、一部が尿中に排出されたものです。通常、微量含まれています。
    • 増加: 肝臓病(肝炎、肝硬変など)、溶血性貧血(赤血球が大量に壊される状態)などで増加することがあります。肝臓の機能が低下したり、ビリルビンが大量に生成されたりするためです。
    • 減少/消失: 胆道が閉塞している場合(胆石、腫瘍など)に減少または消失します。胆汁が腸内に流れず、ウロビリノーゲンが生成されないためです。
  • pH: 尿の酸性度またはアルカリ性度を示します。通常は弱酸性(pH 5.0~7.0程度)です。
    • 酸性に傾く: 肉食、運動後、糖尿病(ケトアシドーシス)、腎機能低下など。
    • アルカリ性に傾く: 菜食、尿路感染症(尿素分解菌によるもの)、腎臓病(尿細管性アシドーシス)、薬剤など。特に尿路感染症ではアルカリ性を示すことが多いです。
  • 比重: 尿の濃さ、含まれている固形成分の量を示します。腎臓が尿を濃縮したり希釈したりする能力を反映します。
    • 高い: 脱水、発汗過多、水分摂取不足、糖尿病(尿糖が多い場合)、腎機能低下(初期の濃縮力低下)。
    • 低い: 水分過多、尿崩症、腎機能低下(末期の濃縮力低下)。
  • ケトン体: 脂肪がエネルギーとして分解される際に生成される物質です。通常はほとんど検出されません。
    • 検出: 糖尿病(特にインスリン不足による糖尿病ケトアシドーシス)、飢餓状態、絶食、激しい運動後、妊娠悪阻などで検出されます。体がブドウ糖をエネルギーとして利用できず、脂肪を分解している状態を示します。
  • ビリルビン: 赤血球のヘモグロビンが分解されてできる色素です。通常、健康な人の尿からは検出されません。
    • 検出: 肝臓病(肝炎、肝硬変、肝臓癌など)、胆道疾患(胆石、膵臓癌などによる胆道閉塞)などで検出されます。胆汁がうまく排出されず、血液中にビリルビンが増加し、腎臓でろ過されて尿中に出てきます。
  • 亜硝酸塩: 尿中に特定の種類の細菌(グラム陰性桿菌など)がいる場合に検出されます。これらの細菌が尿中の硝酸塩を亜硝酸塩に変化させるため、尿路感染症のスクリーニング検査として用いられます。

これらの項目で異常が見られた場合も、他の項目や自覚症状と合わせて総合的に判断する必要があります。単独の異常で直ちに重篤な病気を示すわけではありませんが、医師の判断を仰ぐことが重要です。

尿検査で引っかかったらどうする?再検査や受診の目安

尿検査で異常を指摘された場合、誰でも少なからず不安を感じるものです。しかし、まずは落ち着いて、次に取るべき行動を確認しましょう。

まずは再検査の重要性

尿検査で異常値が出ても、最初にお伝えしたように、一時的な生理的要因によるものである可能性は十分にあります。そのため、健康診断などで異常を指摘された場合、まず最も重要なのは「再検査」を受けることです。

多くの医療機関や自治体では、健康診断で異常があった場合に一定期間をおいて再検査を実施しています。この再検査で異常が消失していれば、多くの場合、先に述べたような一時的な要因(運動、発熱、生理、ストレス、食事など)によるものと考えられ、特に心配ないことが多いです。

再検査を受ける際は、以下の点に注意すると、より正確な結果が得られやすくなります。

  • 検体採取のタイミング: 可能であれば、起床後すぐの「早朝尿」を採取するのが最も望ましいとされています。これは、寝ている間に尿が膀胱に溜まり、濃縮されるため、体の異常が検出されやすくなるからです。
  • 中間尿を採取: 尿を出し始めて最初の方の尿(初尿)には、尿道口の周囲に付着した雑菌や分泌物が混入しやすいです。少し尿を出した後の中間の尿(中間尿)を、清潔な容器に採取するようにしましょう。
  • 女性は生理期間を避ける: 生理中の尿検査は、経血の混入により尿潜血や尿蛋白が陽性になる可能性が高いです。生理期間が終わってから数日経ってから検査を受けるのが望ましいです。
  • 激しい運動や射精を避ける: 尿検査の直前の激しい運動や射精は、一時的な尿潜血や尿蛋白の原因となることがあります。検査の前日は控えるようにしましょう。
  • 十分な水分摂取(ただし直前は控えめに): 極端な脱水は尿を濃縮させ、結果に影響を与えることがあります。普段から適度に水分を摂取することは大切ですが、検査の直前に大量の水分を摂取すると尿が薄まりすぎてしまう可能性があるため、検査1~2時間前は控えめにするのが良いでしょう。
  • 尿沈渣検査における留意点: より詳細な尿沈渣検査では、検体量や遠心条件なども結果に影響することがあります。標準化された方法で検査が行われることが重要です。これに関しては学術的な検討も行われています。(例: 尿沈渣検査における尿量10 mL未満の検査法の構築

再検査で異常が消失すれば一安心ですが、それでも不安が残る場合や、他の自覚症状がある場合は、医療機関を受診しましょう。

医療機関を受診する目安と何科を受診すべきか

再検査でも尿検査の異常値が続く場合や、以下のような状態の場合は、速やかに医療機関を受診して詳しい検査を受ける必要があります。

医療機関を受診すべき目安

  • 再検査でも異常値が改善しない、あるいは悪化している
  • 肉眼で見て明らかな血尿が出た(一時的でも)
  • 尿検査の異常に加えて、以下のような自覚症状がある
    • 排尿時の痛み(排尿痛)
    • 頻繁にトイレに行きたくなる(頻尿)
    • 尿を出しきれていない感じ(残尿感)
    • 下腹部や脇腹、背中の痛み
    • 発熱、悪寒
    • むくみ(特に顔や足)
    • だるさ、食欲不振
    • 急な体重の変化
  • 高血圧、糖尿病などの持病がある
  • 高齢者で、特に症状がなくても尿潜血が指摘された

何科を受診すべきか

尿検査の異常で受診する場合、主に以下の科が考えられます。迷う場合は、かかりつけ医に相談するか、健康診断を受けた医療機関に問い合わせるのが良いでしょう。

  • 泌尿器科: 尿路(腎臓、尿管、膀胱、尿道)の病気を専門としています。尿路結石、膀胱炎、尿路の腫瘍(癌)、前立腺の病気(男性)などが疑われる場合に適しています。尿潜血、尿白血球などの異常はこちらの専門分野です。
  • 腎臓内科: 腎臓自体の病気(糸球体腎炎、糖尿病性腎症、高血圧性腎硬化症など)を専門としています。尿蛋白、腎機能の低下などが疑われる場合に適しています。
  • 内科/かかりつけ医: 糖尿病や高血圧など、全身の病気が原因で尿検査の異常が出ている可能性がある場合、まずは内科を受診するか、普段から診てもらっているかかりつけ医に相談するのが良いでしょう。かかりつけ医は、必要に応じて専門医を紹介してくれます。

医療機関では、尿検査を再度行うだけでなく、血液検査(腎機能、血糖値、炎症反応など)、画像検査(腹部超音波、CTなど)を行い、異常の原因を詳しく調べます。

尿検査前の注意点(直前のトイレ、射精、水分摂取など)

正確な尿検査の結果を得るためには、検体を採取する際の注意点がいくつかあります。前述の再検査の項目でも触れましたが、健康診断や今後の再検査に臨む際に改めて確認しておきましょう。

  • 早朝尿がベスト: 可能であれば、起床後すぐの、長時間膀胱に溜まっていた尿(早朝尿)を採取するのが理想的です。
  • 中間尿を清潔に採取: 尿を出し始めて最初の方ではなく、途中の尿を採ります。容器に尿道口が触れないように注意し、清潔な手で行いましょう。
  • 生理中は避ける: 女性は、月経期間中の検査は避けましょう。
  • 激しい運動や射精の直前は避ける: これらは一時的な異常の原因となります。前日や数時間前からは控えるのが望ましいです。
  • 過度な水分摂取は避ける: 検査の直前(1~2時間以内)に大量の水分を摂ると、尿が薄まりすぎてしまい、異常が見つけにくくなることがあります。ただし、普段から水分を十分に摂っておくことは、尿路感染症などの予防にもつながります。
  • 食事: 一般的な尿検査では、食事が直接的に影響することは少ないですが、尿糖に関しては食後短時間では陽性に出やすいことがあります。特に指示がなければ、通常の食事で問題ありません。

これらの点に注意して検体を採取することで、より信頼性の高い結果が得られ、不必要な心配を減らすことができます。

まとめ|尿検査の異常値は体のサイン、正しく理解し対応しましょう

尿検査は、体、特に腎臓や尿路の健康状態を知るための非常に有用な検査です。「尿検査で引っかかった」という結果が出た場合、不安になるのは当然ですが、まずは落ち着いて、その原因が一時的なものなのか、それとも病気によるものなのかを見極めることが大切です。

多くのケースでは、疲労、ストレス、激しい運動、食事、生理などの一時的な要因によるものであり、再検査で正常に戻ります。しかし、中には腎臓病、尿路感染症、尿路結石、さらには悪性腫瘍など、治療が必要な病気が隠れている可能性も否定できません。

項目 考えられる原因(一部抜粋) 受診の目安
尿蛋白 腎臓病(糸球体腎炎、糖尿病性腎症など)、起立性蛋白尿、運動後など 再検査でも持続する場合、むくみなどの症状がある場合
尿糖 糖尿病、食後の一時的な高血糖、腎性尿糖など 血糖値検査が必要。糖尿病の可能性があれば必ず受診。
尿潜血 尿路結石、膀胱炎、腎臓病、尿路の癌、生理、運動後など 再検査でも持続する場合、肉眼的血尿が出た場合、痛みを伴う場合
尿白血球 尿路感染症(膀胱炎、腎盂腎炎など)、炎症、コンタミネーションなど 症状がある場合(排尿痛、頻尿、発熱など)、再検査でも持続する場合
その他 肝臓病、胆道疾患、脱水、全身の病気など 他の項目異常や症状がある場合、医師の総合的な判断が必要。

尿検査の異常値は、体が発信するサインです。そのサインを見逃さず、正しく理解し、適切な対応をとることが、自身の健康を守る上で非常に重要です。

健康診断や人間ドックの結果で異常を指摘されたら、まずは再検査を受けましょう。再検査でも異常が続く場合や、何か気になる症状がある場合は、迷わず医療機関を受診してください。早期発見・早期治療が、多くの病気において良い結果につながります。自己判断せず、医師に相談することが最も確実で安心な方法です。


免責事項:
この記事の情報は一般的なものであり、個々の健康状態や検査結果については、必ず医療機関で医師の診断と指導を受けてください。この記事の情報に基づいて行った行動によって生じたいかなる結果についても、当方は責任を負いかねます。

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